プリオメラ・フィッシェリ

プリオメラを買うのは三度目だが、三度目の正直というわけにはいかなかった。まず色艶がよくない。腐りかけのピクルスみたいな色をしている。それにあちこち欠けがある。華麗なものが揃うロシア三葉虫には珍しいほどのおんぼろさ。しかし幸いにして(?)こ…

アグノストゥスについて

アグノストゥスの仲間は形が美しいわけでもなく、大きさも1cmに満たないものがほとんどで、三葉虫愛好家にもそれほど受けがよさそうにはみえない。今回、二体が仲よさそうに寄り添っている構図にひかれてプティカグノストゥスの標本を買ってみたが、やは…

優雅で奇怪なウミユリについて

ウミユリの化石は本質的に優雅で、しかも奇怪だと思う。優雅なのは、この生き物が植物に似ているからで、奇怪なのは、その植物的な外見の下にまごうかたなき動物性を露呈させているからだ。このふたつの要素が排斥しあうことなく同居して絶妙のバランスをと…

標本か、書籍か

私はもちろん化石蒐集を楽しんでいるが、それも一定の枠内でのこと。というのも、やっぱりこれは金がかかるわけですよ。欲しいものは際限なく出てくるが、それを買うためのお金には限度がある。それに最近では欲しいものが高額化してきて、おいそれとは手が…

シュードキベレ・ナスタ

わが親愛なる三葉虫を初めとする化石たち。これが女性にはまったく受けないようなのだ。ミネラルショーなんかでも化石のブースで女性の姿を見かけた記憶がない。某化石ショップのページに、ゲラストスについて「かわいいので女性にも大人気」とか書いてあっ…

眼のない三葉虫の眼

眼のない三葉虫の代表格であるボヘミア産のコノコリフェとエリプソケファルス。今回チェコの業者からコノコリフェを取り寄せたところ、いっしょに小さいエリプソケファルスの標本も送ってきてくれた。それらを見て思うのは──たしかに眼はないようにみえる。…

三葉虫は美しいか醜いか

信山社発行の「世界の三葉虫」の著者は、「三葉虫は最も古い化石生物のひとつであり、姿かたちが珍しいうえに美しく、しかも驚くべき多様性に富んでいる」と書いている。いっぽう、評論家の松岡正剛は、その「千夜千冊」に「この古生代全体を3億年ほど生き…

パラドキシデス頌

気持の整理もかねて、思いつくまま書き散らかそうと思う。読みにくかったらごめんなさい。私が初めてパラドキシデスの名を知ったのはリチャード・フォーティの「三葉虫の謎」においてである。フォーティはこの本のはじめのほうに、「私は十四歳のときに三葉…

はじめに

2月の初めに手に入れたパラドキシデス。こやつのおかげで私の一年にわたる化石蒐集はあらかたその意味を失ってしまった。どういうことかといえば──いや、そんなことはだれも聞きたがっちゃいない。とばすとしよう。ともあれ、パラドキシデスに比肩する凄み…