シュードキベレ・ナスタ

わが親愛なる三葉虫を初めとする化石たち。これが女性にはまったく受けないようなのだ。ミネラルショーなんかでも化石のブースで女性の姿を見かけた記憶がない。某化石ショップのページに、ゲラストスについて「かわいいので女性にも大人気」とか書いてあったが、これもおおかた嘘ではないかと思っている。

しかし、これならあるいは女性にも好かれるんじゃないか、と思われる三葉虫がいる。今回それを手に入れた。その名もシュードキベレ(プセウドキベレ)・ナスタ。ファコプス目プリオメラ科に属する三葉虫で、シュード(pseudo-)というのは偽の、まがいものの、の意味だから、シュードキベレは「まがいキベレ」もしくは「キベレもどき」という意味になる。キベレというのは姉妹科のエンクリヌルス科に属する優雅な三葉虫で、高くてなかなか手が出ないもののひとつ。


Pseudocybele nasuta


初めて見たときから、その顔のかわいさに参ってしまった。Mスター・Fッシルの商品説明文に「デフォルメされたナメクジのようなひょうきんな顔」とあるが、まったくもって的を射た表現だと思わざるをえない。

ただし、である。そのかわいい顔がなかなか見えないのだ。なぜかといえば、体長1.8cmという小ささなので、当然のことながらよほど目を近づけるか、あるいはルーペで覗くかしないと顔がはっきり確認できないのである。

うーん、せめて3cmくらいあればなあ、と残念なのだが、この、かわいい顔がなかなか見えないというのも奥床しくていいのではないか。それに、本種の魅力は顔だけではない。プリオメラふうの溝の深い体節や、流れるような全体のフォルムにも優雅な趣は認められる。さすがに、まがりなりにもキベレの名を冠するだけのことはある。

あと余談だが、キベレといえば映画の「シベールの日曜日」を思い出す。これに出てくる女の子は、本名をシベールというのだが、ふだんはフランソワーズという仮の名で通している。その本名を主人公の青年にだけ打ち明けるシーンで、紙に大きな字で「Cybèle」と書いてみせたのが印象に残っている。