ヒドロケファルス・ミノル

バランドの図版集にはボヘミアで産出するパラドキシデス類が12種類あがっている。

1) Paradoxides lyelli
2) P. sacheri
3) P. rugulosus
4) P. bohemicus
5) P. spinosus
6) P. desideratus
7) P. expectans
8) P. orphanus
9) P. pusillus
10) P. inflatus
11) P. imperialis
12) P. rotundatus

これらを、個体差や亜種を考慮に入れずに、現代風の分類になおしてみると、下記のようにまとめることができる。

1) 12) → Rejkocephalus rotundatus
2) → Acadoparadoxides sacheri
3) 8) 9) → Eccaparadoxides pusillus
4) 6) → Paradoxides gracilis
5) 10) → Hydrocephalus carens / Hydrocephalus minor
7) → Clarella (Luhops) expectans
11) → ?

最後のクラレラ(ルーオプス)は、現在ではパラドキシデス科ではなく、姉妹科のケントロプレウラ科に分類されているから除外することにしよう。さらに不明の 11) をはずすと、ボヘミア産パラドキシデスは5種(もしくは6種)にしぼられることになる。

これらの5種(もしくは6種)の標本を手に入れるのは、保存状態をやかましく問わなければ、今でも比較的容易だ。アカドパラドキシデスだけはむつかしいかもしれないが、これもザッヘリではなくてシロキイ(sirokyi)ならば何とかなる。

それじゃがんばってぜんぶ揃えますか? 

ボヘミア三葉虫の真の愛好家ならばそうするだろう。しかし、これらのうちのあるものは他のものに酷似している。ことによったら同じものが異なった名前で出ている場合もある。それに細かい差異にこだわると、上に書いたように個体差や亜種にまで注意をはらう必要が出てくるから、あまり深入りしないほうが身のためだ。

目につく範囲で安いものがあったら少しづつ買い足していけばいい。もしかしたら(運がよければ?)、数年後には5種(もしくは6種)すべてが揃っていた、なんていう事態もありうる。

     * * *

さて今回手に入れたのはヒドロケファルス・ミノルの幼体。パラドキシデス類の幼体には成体にはない特徴がある。それは第二胸節の棘が長く伸びている点だ。子供のときにだけあるこの棘が何の役に立っていたのかはよく分らないらしい。全般的にパラドキシデス類よりもネオテニー的傾向にあるオレネルス類では、成長後もこの長く伸びた肋棘(第三胸節にある)が失われずに残っている。

それにしてもこのヒドロケファルスの子供、小さいくせに妙に老成してみえる。三葉虫には若年様式(と仮に私が名づけているもの。ユーゲントシュティール)と、老年様式(アルテルシュティール)とがあって、前者に属するものは大人になっても幼くみえる(たとえばキファスピデスなど)。それに比べて後者に属するものは子供のころから年寄りくさい(言葉を換えれば貫禄がある)。パラドキシデス類はもちろんこっちの部類に入る。


Hydrocephalus minor