ティサノペルティスの一種

もともとあまり好きではなかったスクテルムの仲間だが、シュナイドルの集めた写真(おもにプラハの博物館所蔵のタイプ標本)を見ているうちに、だんだんとこの種類に興味をもつようになった。なによりも私を打ったのは、その古色蒼然たるたたずまいだ。それはまるで矢尽き刀折れ、満身創痍で仁王立ちした古武士のようだ。早い話がぼろぼろの標本なのだが、このおんぼろさには無限の滋味がある。スクテルムよ、いままで毛嫌いしていてすまんかった、と頭を下げたいような気持になった。



上にあげたのはそのうちティサノペルティスの画像だが、しかし現在こういうタイプの標本を手に入れようとすると逆にむつかしい。目につくのはきれいにクリーニングされたモロッコ産のものばかりで、そこでは「美」ばかりが追求され、「醜」のほうは彼方に追いやられているからだ。しかし私は思うのだが、化石においては「醜」もまた美学の重要な一端を担うはずなのである。「醜の美学」なしには化石の魅力は成り立たないのである。

さて今回手に入れたティサノペルティスだが、一般に出回っているものと比べると格段にレベルは落ちる。まずは申し分のないおんぼろさ。とはいえ、やはりシュナイドルの本に出てくる古武士たちと比べると、いろんな意味で役不足だ。これはまだ時間の腐食作用によく耐えているほうなのである。


Thysanopeltis sp.


購入元の話では、30年ほど前にジベル・イスムールで採れた標本で、そのころはこの手の三葉虫が露頭でよく見つかったそうである。


     * * *


この標本には、珍しくネガがついている。そしてこのネガは、某化石屋さんがいうように黒くはない*1。化石屋さんの言い分ではモロッコ産の三葉虫はポジもネガも黒いということだったが、そんなことはないのである。そして、ポジ側には外殻らしきものがはっきり残っている。それは質感が母石と歴然と異なることから明瞭だ。



プロのいうことだからっていちがいに鵜呑みにはできないというお話。