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プラコパリアの一種

保存がよく、サイズも大きく、しかも安価なモロッコ産の三葉虫。これはわれわれにとっては非常にありがたい存在だ。ヨーロッパではすでに採れなくなった種類のものも、モロッコでならまだ産出する。多少の種の違いはあっても、属レベルで同等かそれ以上の品が手に入るのだから、これを利用しない手はない。

今回手に入れたのはそんなモロッコ産のプラコパリア。残念ながら種名までは分らないが、いずれ調べのつくときがくるだろう。

これは本体は5cm弱とそんなに大きくないが、母石がむやみに大きく、かつ重い。荷物を受け取ったときはあまりの重さに、こんなもの発注したっけ、といぶかしく思ったほどだ。

重さだけでなく、標本そのものにも驚かされた。ふつうなら梱包をあけて中身を見たときの感想は「すごい」「かっこいい」「渋い」「かわいい」「しょぼい」「つまらん」などだが、今回のは「ウッ、きもちわる・・・」だった。最大の理由はおそらくその色にある。古くなった紅しょうがに砂をまぶしたような感じで、生理的に嫌悪感をもよおさせる色合い、質感なのである。これにはちょっとまいった。


Placoparia sp.


プラコパリアは見た目はプティコパリアやコノコリフェに似ているのでプティコパリア目に属するのかと思うが、じっさいはファコプス目プリオメラ科に属している。そのことは尾部に顕著にあらわれている。この標本では尾肋の先端が母石にめり込んでしまっているが、それはけっしてケイルルス科のあるもの、たとえばエコプトキレやアクティノペルティスの尾肋のようにそれ自体が丸まっているのではなく、プリオメラやシュードキベレのように下に向けて巻きこむようなかたちで曲っているだけなのである。

母石の大きさもあって、存在感という点ではうちにある標本の随一だが、もうひとつ驚いたのは標本の横に書いてある数字だ。それは私がここ十年以上使っている4桁の暗証番号なのである……

さすがにこの点が気になって、入手元へ問い合わせてみたら、この標本はヨーロッパでも屈指の蒐集家であるボンメルという人の放出品で、その人は2500個もの三葉虫の標本のひとつひとつに参照番号を書きこんでいるという。今回はたまたまその数字(つまり私の使っている暗証番号)のものがうちに来ただけのことだ。

それにしてもやはりあまり気持よくはない。本体のぶきみさとも相俟って、どことなく呪われた標本のようにみえてしかたがない。