レドリキア・シネンシス

ふた月ほど前に手に入れたもので、いままで買った三葉虫のうちでもいちばん安かった。1500円ほどだったが、そんなに人気がないんですかね、この種類?

たしかに地味なうえに小さくて彫りが浅い(というか薄い)ので、まったく見栄えがしない。私がこれを買ったのも、多分にレドリキアという名前に惹かれてのことだ。

レドリキア目といえばもっとも原始的な三葉虫のグループで、カンブリア紀中期末にはすでに滅びている。絶滅種のなかの絶滅種ともいうべき存在で、その古さだけとっても私には非常に魅力的なのである。そのレドリキア目を二分する勢力の一方がレドリキア亜目で*1、その代表であるレドリキアには前から関心をもっていた。

で、この標本だが、上に書いたようにとにかく彫りが浅い。石灰岩上にうっすらと浮び出た印象を見ていると、いまにも風化して消えてしまいそうだ。これはなんとかせねば、というわけで、保護剤を使ってみようと思い立った。

しかし何を塗ったらいいのか?

Mスター・Fッシルさんに問い合わせたところ、「かなり水っぽい接着剤を少しずつ染み込ませて
固めた後、ラッカー系のクリアを塗り、最後に艶消し剤を吹き付けるというのが最も簡単な処理方法かと思います」とのことだ。しかしたかだか1500円の三葉虫にそこまで手間をかける必要があるだろうか。

そこでためしに手持ちの紙粘土用のニスを水で薄めて塗ってみた。みるみるうちにニスが石にしみ込んで、グレーだった表面がダークグレーになる。乾くのをまって確認すると、おお! なにやら石そのものに生気が吹き込まれたかのようで、全体が奇妙な存在感を放っている。これはおもしろいと思ってもう一層塗ってみた。

保護剤としては二層塗りでじゅうぶんのようだったが、さらにもう一層塗ったらどうなるか、という好奇心に負けて塗り重ねてみたが、これは失敗だった。表面が完全にコーティングされ、かんじんのレドリキアの印象がすっかりぼけてしまっている。

これはいかんとふたたびアセトンでニスを落とす。しかしどうも石にしみ込んでしまったニスは取れないらしく、完全に元の状態に戻すのは不可能だった。

これは失敗のようだが、じつはさにあらず、印象の溝(体節や肋棘)にしみ込んだニスがそこだけ取りきれず残っているせいで、全体としては彫りが深くなったようにみえ、距離をおいても形がくっきりと見えるようになったのはありがたい。


Redlichia chinensis(中華莱徳利基虫)


うちにあるレドリキア目の標本と並べて写してみた。



しかしこうしてみると、やはりサイズの小ささというのは如何ともしがたいものがありますね。

*1:他の一方の勢力はオレネルス亜目