化石に寄せて

シューベルトの有名な歌曲「音楽に寄せて」。これは芸術、とくに音楽に対して「ありがとう」と感謝の意を表する歌なのだが、この「芸術」を「化石」に読み替えてみると──


An die Musik

Du holde Kunst,in wieviel grauen Stunden,
Wo mich des Lebens wilder Kreis umstrickt,
Hast du mein Herz zu warmer Lieb entzunden,
Hast mich in eine beßre Welt entrückt!

Oft hat ein Seufzer,deiner Harf' entflossen,
Ein süßer,heiliger Akkord von dir
Den Himmel beßrer Zeiten mir erschlossen,
Du holde Kunst,ich danke dir dafür!


かわいい化石たちよ、
すさんだ生活の輪に巻き込まれた灰色の日々に、
私の心に暖かい愛の火をともし、
別世界へいざなってくれた化石たちよ、

きみたちの奏でる弦の響きが、
甘い、神々しい調和の音が、
楽園のような日々を私に与えてくれた、
かわいい化石よ、そのことをきみらに感謝したい。


うん、いい歌ですね。下のリンクは youtube で見つけたアメリング&ボールドウィンの演奏。


(追記、2/1)
一般に思慕をうたった詩では、その対象を化石に置き換えてもしっくりくる場合が多い。たとえば次のようなのはどうだろうか。


ためらいながらよそ見する愛のうつり気、
ひとつの標本から、
またほかの標本へと心をうつすたのしさ。
つつましいひかえめがちの三葉虫から、
はれやかな吸いよせるような眼の三葉虫へと、
とりとめもなくとんでゆく心の憂鬱。