花粉、杉、アヌラリア

毎年この季節はとにかく眠い。なんでこうなのか、と考えるまでもなく花粉のせいだ。花粉の大量発生の原因はもちろん植林された杉だろうけど、それ以外にも春は各種の植物の花粉が飛び散る時期なのではないか。昔の人も「春眠暁をおぼえず」と歌ったように、空気中に浮遊するさまざまな花粉が人体に影響をおよぼして、眠くなったりだるくなったりするのではないかと思う。

杉は起源の古い、原始的な植物で、ナンヨウスギはよく珪化木になったのが売られている。私もいっとき小さいのを持っていたが処分してしまった。珪化木は植物化石というよりむしろ鉱物だと思う。とくによく出回っているスライスされた派手な色彩のものには、化石らしいところはどこにもない。今ではもうああいうものへの興味はなくしてしまった。

そういっても、植物化石全般への興味はまだ残っていて、ときどき思い出したように買い求めることがある。最後に買ったのはスペイン産の蘆木(ロボク)だった。今回買ったのはそのロボクの葉っぱの化石であるところのアヌラリア。これはメゾン・クリークで出るものが有名だが、個人的には上部シレジア(ポーランド)で採れたものにとどめをさす。


Annularia radiata


アヌラリア・ラディアータとは「放射状になった環形のもの」という意味だろう。この標本は葉っぱの部分が妙にくっきりと黒光りしているので、もしかしたら塗装してあるんじゃないか、と思って購入元にきいてみたところ、「そんなことはぜったいにない。それは私が保証する」とのことだった。まあ塗装はあってもなくてもかまわない。これが真正の化石であればそれでじゅうぶんだ。

アヌラリアとよく似ているものにアステロフィリテス(Asterophyllites)というのがある。これもやはりロボクの葉っぱの化石だが、葉の形状が違っていて、まるで松葉のように細く尖っている。ロボクの遠い子孫である(?)スギナも同じような葉をつけるのがおもしろい。


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最後に、私を植物化石の世界に誘ってくれた小畠郁生氏の「失われた生物」という本から石炭紀の記述の一節を抜いておく。

「……緑一色の森林では羊歯植物が茂っては倒れ、茂っては倒れ、葉や小枝もいっぱい落ちて積み重なった。沼や湖の泥に埋もれ、泥の上に泥が積もり、何万年、何億年のうちに堆積物は地層となり植物は化石となった。……」