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プリキクロピゲ・ビノドサ

ボヘミア三葉虫好きにはたまらん標本が満載のシュナイドルの写真集。そのうちでもシャープな印象を残すのがプリキクロピゲだ。とりあえず下に画像をあげておく。



え、どこがすごいのか分らない、ですか。そういうあなたはまっとうな感覚の持主です。こういうものに必要以上に興味をもつのはすでにかなり病んでいる証拠だ。

プリキクロピゲはチェコだけでなく英国でも産出する。今回手に入れたのは英国シュロップシャーのもの。これは某オークションで落とすつもりもなく入札しておいたらだれも入札せずに終了してしまったもの。


pricyclopyge binodosa


binodosa とは「結び目がふたつある」という意味だが、じっさいのところ結び目というより孔ですね。それがふたつ第三胸節に並んでいる。私がプリキクロピゲに惹かれたのはこの孔によるところが大きい。チェコ産のものと比べると、その位置はじゃっかん上に寄っている。

キクロピゲ属の最大の特徴である巨大な複眼はこの標本ではまったく窺えない。だいぶ前にモロッコ産のキクロピゲにふれたとき、「目のない完全体よりは目のある部分化石を」というようなことを書いたが、今回とうとう目のない完全体(それを完全体と呼ぶとして)を買ってしまったわけで、こんなところにも私の病みっぷりが現われている。

最後にくだんの孔の用途について書いておく。どのみち推測の域を出ないが、私がおもしろいと思ったのは、ここにホタルのような発光装置がついていた、という説。キクロピゲはその目からも分るように光の乏しい環境、つまり深海で生活していたから、暗闇のなかで仲間とコミュニケーションをとるために、背中に発光装置をつけて泳ぎまわっていた、というのである。キクロピゲはたいてい仰向きになって(人間でいえば背泳ぎで)泳いでいたらしいから、仲間の背中はよく見えただろう。