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カリメネ・クラヴィクラ

どの年代の三葉虫がいちばん好きか、と訊かれてもうまく答えられない。どの年代のものもそれぞれ魅力的で、これがいちばんとはいえないからだ。しかし、翻って考えてみると、たとえばカンブリア紀三葉虫とかデボン紀三葉虫とかいわれてもべつに何とも思わないのに、シルル紀三葉虫といわれたらはっとするのはどうしたことだろう。「シルル紀三葉虫」という言葉には、なにか人を酔わせるような甘美な響きがある。

さて、最近の関心の対象であるオクラホマだが、ここのシルル系としては、ブラックキャットマウンテンのすぐ北西に位置するポントトック郡にヘンリーハウス層というのがある。ここにはイエローブラフと呼ばれる産地があって、カリメネを多産するので有名だったらしいが、1980年代末にはすでに一般の採取は禁止されてしまったようだ。もちろんそれ以外にも三葉虫の産する場所はいくつかあるようだが、いずれもそうむやみに掘り返すわけにはいかないようで、カリメネですらなかなか市場に出てこなくなっている。

今回手に入れたのはそのカリメネで、正式にはカリメネ・クラヴィクラと呼ばれるもの。母岩から完全に取り外されていて、裏側(といっても頭部と尾部のみ)を見ることができる。サイズは約55mm。


Calymene clavicula


今回の標本では自在頬のあたりがじつに微妙な感じで、縁に近い部分が両方とも裏側へ折れ込んでいる。尾部も同様で、ひしゃげた縁の部分が重複板に折り重なっているように見える。結果的に、頭部は上から押しつぶされたようになり、尾部は寸足らずのようになっている。



完全体には違いないが、こういうふうに部分的にひしゃげたものはやはり半端もの扱いのようで、値段もそのぶん安かった。しかし私にはこの程度の変形はじゅうぶん許容範囲内なので問題ない。むしろこういうもののほうが気楽につきあえるのでありがたいともいえる。


     * * *


今回オクラホマのものが加わったことで、うちにあるカリメネは三種類になった*1。「似たようなものばっかり集めて……」といわれるかもしれないが、カリメネは三種類くらいではなかなかおさまらない。思いつくままあげても、頭部にへらのような突起をもつスパタカリメネ、おっさん然とした風格のメタカリメネやプラティカリメネ、優雅なグラヴィカリメネ、それにカリメネの中のカリメネともいうべきブルーメンバッハのカリメネがある。ちょっと目先を変えればコルポコリフェやサルテロコリフェもこの仲間に入る。広義のカリメネということでいえばホマロノトゥスやスカブレラまで入ってくる。なかなか「似たようなもの」でおさまる話ではないのだ。




さて、カリメネといえば目が残らないことで知られるが、いったいどういうわけでそうなのかとなると、納得のいく説明を見たことがない。もしかしたらカルサイトの結晶ではなくて、なにかもっと腐敗しやすい物質(たとえばキチン質やタンパク質)でできていたのだろうか? 知っている人がいたらぜひ教えてください。

*1:他はオハイオのフレキシカリメネとインディアナのステナロカリメネ