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ゴトランドのヘキサゴナリア

古代のサンゴの化石はどうもあまり人気がないみたいで、たいていは二束三文で取引される。しかしこれは私にはありがたい。日本にいてはとてもお目にかかれないようなものが安く手に入るのだから。

サンゴはクラゲやイソギンチャクの仲間で、硬い骨格(というか棲み処)をもっているのが特徴だ。化石として残るのはもちろんこの骨格だけで、本体のほうはまず残らない。かつての住居だけが時の試練に打ち勝って残される。それは比喩的にいえば廃墟であって、廃墟になんらかの興味をもっている人間にはアピールするものがあるはずなのだ。

そういっても、市場に出ているサンゴの化石で、これは廃墟だなあ、と思えるようなのはじつはそれほど多くない。たいていはきちんと整形されているか、もしくは研磨されているかで、それはそれで大いに結構なのだが、もっと廃墟然とした標本があってもいいんじゃないかと思っていた。

今回手に入れたのは自然に風化したタイプのもので、整形などはいっさい行われていないようだ。それだけに見栄えはよくないけれども、潜在的な廃墟マニアの私にはけっこうおもしろく眺められる。非常に硬くて重い石灰岩を母岩としていて、サンゴ本体のほうはほぼ完全にカルサイト化している。ていねいに母岩を落していったら、骨々としたサンゴの骨格があらわになるんじゃないか、と思われるほどのもの。




ヘキサゴナリアというのはこのタイプのサンゴの総称で、サラ・エリアソン女史の「太陽石と猫のしゃれこうべ」という本によれば、この標本の母岩は礁石灰岩(リーフ石灰岩、reef limestone)、本体は Acervularia ananas のようだ。Ananas とはパイナップルのことで、孔の断面が輪切りにしたパイナップルにみえることからそう名付けられたらしい。