ゲーソプス・シュロートハイミ?

今年に入って手に入れたアイフェル産の二つ目がこれ。一つ目については後日取り上げるつもり。


Geesops cf. schlotheimi



いろいろと謎の多い標本だが、いちばん根源的な疑問は、これはいったい化石なのか、ということ。少なくとも私はここまで保存のいい、完璧に丸まったファコプスを見たことがない。母岩は痕跡すら残さずきれいに取り去られていて、もともと土中に埋まっていたという事実をますます見えにくいものにしている。これがモロッコ産だったら、あるいはアメリカ産だったら、私もそれなりに納得しただろうけど、なにしろ出所はアイフェルである。この産地のものは、図鑑やネットで見るかぎり、それほど保存状態はよくなさそうなのだが……

アイフェル(Eifel)というのはドイツの西側、フランスやベルギーとの国境に近い一帯で、ここのゲース(Gees)という村の近くにペルム=ザルマー・ヴェーク(Pelm-Salmer Weg)という場所がある。ここは一名 Trilobitenfelder(三葉虫ヶ原、三葉虫畑) とも呼ばれていて、良質の三葉虫が採れるので有名な産地なのだが、度を越えた採掘が環境破壊をもたらして、とうとう1984年には一般の採取が禁じられてしまった。1984年。ずいぶん遠い昔のようでもあり、つい最近のことのようでもある。

ただ私の思うのに、これまで採取された原石のストックがかなりあって、それらが最新の機械で剖出・整形されたものが市場に出てきているのではないか。そうでなければ今回の標本のような状態のいいものが手に入るはずはない。

本種はゲースではもっとも一般的な種類で、ここで採れる三葉虫の九割を占めるという。モロッコ産やアメリカ産のもののように大きくはならなかったようで、3cmもあれば大きいほうではないだろうか。そしてなぜか体を丸めた状態のものがほとんどで、まっすぐ伸びたものはまずお目にかからない。

ゲース産の三葉虫でもっとも早く研究されたのも本種で、1825年にブロン(Bronn)が Calymene schlotheimi の名前で記載している。当時はファコプスという名前がまだなかったらしく、ブロンニャールのごときもファコプスの一種にカリメネの名を与えている*1

今回のものはもともと顔の前面に変なものがくっついていて、目ざわりなので金ブラシでこすり落した。変なものというのはおそらく母岩の滓で、この部分で母岩とつながっていたのがなにかの拍子に折れたのではないかと思う。


買ったときの状態

こすり落した結果

*1:Calymene macrophthalma すなわち眼の大きいカリメネ!