母岩を切り落す

最近はアメリカ、ことにニューヨークの三葉虫に興味をもつようになって、先日もシルル紀三葉虫、カリメネ・ニアガレンシス(Calymene niagarensis)を入手した。状態はあまりよくないけれども、カリメネ本来の美しさは損なわれていない。圧縮されてずれずれになった体節にも優雅な趣は見て取れる。さすがはニューヨークのカリメネだ、と感心していたが……

どうも母岩がよろしくないようなのだ。この申し訳程度についている母岩が標本を台なしにしているような気がしてならないのである。そこでまず頭の前に飛び出している小さい母岩を切り落してみた。




これで少しはすっきりしたが、そうなると今度は後ろに出ている大きめの母岩が不格好に見えてくる。そこでこれも切り落した。裏面を平らにならして、完全にマトリクスフリーの状態にもっていったが、そうすると次に気になってくるのが左の遊離しかけた自在頬だ。自在頬、なければないでいいけれども、中途半端にシンメトリーを破っているのは私の美意識に反する。そこでこれを切断、整形のうえ、固定頬に貼りつけることにした。





こういう一連の作業は「補修」ではなく「修復」の範疇に属するものだと思う。産出したままの状態より見栄えを重視して、人工的に補正を加えること。ロシアやモロッコの三葉虫ではこれが当然のように行われている。そしてそれが行き過ぎにならなければ、必ずしも忌避する必要はない。修復率何パーセントと書かれているからといってそれだけで価値が下がるというものではないのだ。