読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

スカンジナビアのパラドキシデス

スウェーデン産というので購入したパラドキシデスの頭蓋。いちおう種類としてはパラドキシデス・ダヴィディス、産地はエステルスンドとあるけれども、それが正しいかどうかは私には判断できない。大きさは縦の長さが6cmほどで、もし全身揃っていたら25cmくらいになるだろうか。本体は保護剤でも塗ってあるのか黒光りしていて、まるで鉄兜のようだ。


Paradoxides davidis?


パラドキシデス・ダヴィディスといえば、ウェールズニューファンドランド島でほぼ同じようなのが産出する。こうも離れた土地で近縁種が出るのは、つまりカンブリア紀にはそれらが同じ場所にあったからで、その後大陸が移動するにつれて分断され、ついには大西洋を隔てて西と東に分かれてしまったのである。

いっぽう、スウェーデンのパラドキシデスといえば、リンネが最初に記載した Entomolithus paradoxus(奇異なる虫石、の意) にまず指を屈しなければならない。これはエーランド(Öland)で産出したものらしく、その後ヴァーレンベリとブロンニヤールによって Paradoxides paradoxissimus と改名され、いまもその名で呼ばれている。

前の記事(→パラドキシデス頌 - ファコプスの館 -La Maison de Phacops)にリンネの当該標本の画像を載せておいたが、これがはたしてパラドキシデス・パラドキシッシムスかどうかとなると疑問がないわけでもないらしい。というのも、まず体節が20で、これはP.パラドキシッシムスの体節数の21と合わない。棘の形状から推して同じくスカンジナビア種のP.フォルヒハンメリ(P. forchhammeri)に近いようでもあるが、しっぽを見るとP.ダヴィディスの亜種にも似ている。

ほぼ全身が揃った標本でもこのように特定はむつかしい。いわんや、頭蓋だけでは判断なんてできるはずもないのだ。

とはいうものの、今回手に入れた標本はその母岩の独特の色合といい、本体の特徴的な保存のされ方といい、知っている人にきけばすぐに「ああ、これは〇〇」と答えてくれそうな気もする。しかし私としてはすぐに答えを出す前に、もう少し夢想の時間が欲しいと思う。これははたしてダヴィディスであろうか、それともフォルヒハンメリか、パラドキシッシムスか、あるいはそのうちのどれでもないリンネのエントモリトゥスであろうか。そんなことを考えながら、リンネにまでさかのぼるスカンジナビアのパラドキシデスの系譜に思いを馳せる。