オギギオカレラ・デブッキイ
今回取り上げるのはウェールズのオギギオカレラ。いちおうアングスティッシマ種とのことだが、やはりというかデブッキイ種の線が濃厚だ。まあ見た目はどっちもほとんどいっしょだからあまり気にすることはないのだが……
ローレンスとスタマーズの共著「世界の三葉虫」には、イングランド産5ヶ、ウェールズ産10ヶと、合計15ヶものオギギオカレラの標本が載っている。そんなにたくさん載せる必要があるのかどうかは別として、それだけ多産する、つまり英国を代表する種類であることは確かだろう。
今回の標本は、裏側の母岩を貼り合せた接着剤の痕も含めて、かなり年季が入っているようにみえる。おそらくオールドコレクションの放出品であろう。新規に整形された、できたての標本ももちろん魅力的だが、こういう古い標本には骨董品のような魅力がある。化石自体の古さに加えて、ものとしての古さが古物愛好家の心に訴えるのである。
本体の大きさは95mmで、一般に出回っているもののうちでは大きいほうだと思う。
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三葉虫の分類の最初の試みとされるブロンニヤールの1822年の論文。ここにみられるオギギオカレラはまだアサフスと呼ばれている(Asaphe de Debuch, Asaphus debuchii)。別にオギギア(Ogygia)という名称があるにもかかわらず、である。ブロンニヤールはアサフス目を設けて下記の5種類の三葉虫を配した。
1. Asaphus cornigerus (= Asaphus expansus)
2. Asaphus debuchii (= Ogygiocarella debuchii)
3. Asaphus hausmanni (= Odontochile hausmanni)
4. Asaphus caudatus (= Dalmanites caudatus)
5. Asaphus laticauda (= Eobronteus laticauda)
カッコ内は現行の名称。これでみると、こんにちでもアサフスに属するとされるのは 1) と 2)のみだ。1) はスウェーデンおよびロシアで産するアサフスで、ヴァーレンベリの命名になる古典的なもの。3) と 4) は今日ではダルマニテス科に属する。5) はスクテルムの一種で、スウェーデンで産する(ただし頭部と尾部のみ)。
最後にブロンニヤールの論文に掲げられた挿絵をのせておく(上記の 5) 以外の標本各種)。