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オギギオカレラ・デブッキイ(その2)

前回(一ヶ月以上も前だ!)書いた台所の掃除はすばらしい効果をもたらした。というのも、今年の夏はあの黒い忌わしい小動物の姿をまったく見ていないからで、こんなことはいまだかつてなかった。G駆除のための秘訣は、まず水回りの徹底的な清掃、食材の余りはかけらも残さず始末すること、それとコンバットの設置(←これ大事)、など。

Gといえば、いつだったか手に入れたユタ州のアサフィスクスが、大きさといい質感といい、あまりにもこやつに酷似していて、見ているのがつらくなり、処分したことを思い出す。ああいうのが一回でもあるとダメだね、新たに買おうという気が失せてしまう(ごめんねアサフィスクス)……

さて今回取り上げるのはウェールズのオギギオカレラ。いちおうアングスティッシマ種とのことだが、やはりというかデブッキイ種の線が濃厚だ。まあ見た目はどっちもほとんどいっしょだからあまり気にすることはないのだが……ちなみに両者の見分け方は前の記事(→オギギオカレラ・デブッキイ - ファコプスの館 -La Maison de Phacops)に書いた。


Ogygiocarella debuchii


前の記事の、つまり前回手に入れたオギギオカレラだが、私はどういうわけかシュロップシャー産だと思い込んでいて、今回ウェールズのものが出ていて飛びついたのだけれども、改めてデータを見直すと、前のもウェールズ産でした(!)。同じ産地でも採れる場所が違うと母岩も含めてずいぶん感じが変るものだ。



これだけ違いがあれば、同じ産地の同じ種類をふたつもっていても不都合はないだろう。ローレンスとスタマーズの共著「世界の三葉虫」には、イングランド産5ヶ、ウェールズ産10ヶと、合計15ヶものオギギオカレラの標本が載っている。そんなにたくさん載せる必要があるのかどうかは別として、それだけ多産する、つまり英国を代表する種類であることは確かだろう。

今回の標本は、裏側の母岩を貼り合せた接着剤の痕も含めて、かなり年季が入っているようにみえる。おそらくオールドコレクションの放出品であろう。新規に整形された、できたての標本ももちろん魅力的だが、こういう古い標本には骨董品のような魅力がある。化石自体の古さに加えて、ものとしての古さが古物愛好家の心に訴えるのである。

本体の大きさは95mmで、一般に出回っているもののうちでは大きいほうだろう。


     * * *


三葉虫の分類の最初の試みとされるブロンニヤールの1822年の論文。ここにみられるオギギオカレラはまだアサフスと呼ばれている(Asaphe de Debuch, Asaphus debuchii)。別にオギギア(Ogygia)という名称があるにもかかわらず、である。ブロンニヤールはアサフス目を設けて下記の5種類の三葉虫を配した。

1. Asaphus cornigerus (= Asaphus expansus)

2. Asaphus debuchii (= Ogygiocarella debuchii)

3. Asaphus hausmanni (= Odontochile hausmanni)

4. Asaphus caudatus (= Dalmanites caudatus)

5. Asaphus laticauda (= Eobronteus laticauda)

カッコ内は現行の名称。これでみると、こんにちでもアサフスに属するとされるのは 1) と 2)のみだ。1) はスウェーデンおよびロシアで産するアサフスで、ヴァーレンベリの命名になる古典的なもの。3) と 4) は今日ではダルマニテス科に属する。5) はスクテルムの一種で、スウェーデンで産する(ただし頭部と尾部のみ)。

最後にブロンニヤールの論文に掲げられた挿絵をのせておく(上記の 5) 以外の標本各種)。