ダルマニテス・リムルルス

ダルマニテスは、三葉虫に興味をもった当初から気になる存在だった。そのころ書いたメモに「なんとなく知的な感じがするのは気のせいか」とあるが、いまもその気持は変らない。三葉虫界きっての知性派(?)であり、「虫」というより魚類を思わせるその形状は、単純ながら美しい。いっときオクラホマ三葉虫に熱中しかけたとき、フントニアをどうするか考えていて、いやいやフントニアよりダルマニテスを優先すべきでしょ、という結論に達した。フントニアもわるくないが、値段が高すぎる。なまじ状態のいいものを見ているだけに、中途半端なものでは満足できなくなっているのも問題だ。

というわけでダルマニテスに的をしぼっていたのだが、じっさいに手に入れるまではずいぶん時間がかかった。というのも、市場に出ている数はけっして少なくないのだが、そのいずれもが私の思い描くダルマニテス像と合致しないのである。しまいにはいったいどこにポイントをおいて選べばいいのか、自分でもわからなくなってきた。そこでいちおうの基準として、

修正の痕が目立たないこと(本種には無修正の標本はほぼ皆無だ)
眼がちゃんとついていること、個眼が確認できること
頬棘と尾棘が折れずに伸びていること
頭鞍溝が確認できること(←意外と大事)
それなりのサイズがあること
本体が母岩とうまくマッチしていること

などを立ててみた。

まあ実際には、こういう条件のほかに、画像を見たときビビッとくるものがなければならない。これは直観的なもので、説明のしようがないが、同好の士には説明の必要もないだろう。

で、最近ようやっと手に入れたのが下の画像のもの。


Dalmanites limulurus


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この前のオギギオカレラの記事でも言及したように、ブロンニヤールの1822年の分類ではダルマニテスはアサフスに分類されている。ブロンニヤールの採り上げているのは英国ダドリー産のダルマニテス・カウダトゥス(Dalmanites caudatus)だが、眼の形状をべつにすれば、本種にきわめてよく似ている。時代もシルル紀で同じだ。平べったい体に、眼だけが突兀としているのはちょっと異様な眺めではある。

下の画像はオクラホマのアサフスことホモテルスと並べて写したもの。



分類上はともかくとして、ダルマニテスの系譜を追うと、オルドビス紀のダルマニティナからシルル紀のダルマニテスを経てデボン紀のフントニアやオドントキレ(ズリコヴァスピス)へと進化したのではないかと思われる。オドントケファルスはこの系譜のうちの変り種といったところか。ポルトガル産でよく見かけるエオダルマニティナ・デストンベシ(Eodalmanitina destombesi)ももちろんこの仲間で、模式種エオダルマニティナ・マクロフタルマ(Eodalmanitina macrophthalma)はかつてブロンニヤールによってカリメネに分類されたことがある。

これを整理すると、カリメネによく似たダルマニティナからアサフスによく似たオドントキレに至る中間の段階を画するのがダルマニテスではないか、という気がする。

ブロンニヤールの分類はこんにちの目からみると変なところが多いが、そこがかえっておもしろいので、いずれまとめて記事にしてみたいと思う。


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本種の種名はリムルルス(limulurus)とリムロイデス(limuloides)の二通りが行われているようだ。どっちも命名者はグリーンだというからよけいややこしい。ちなみに limulus というのはカブトガニのことで、limulurus はカブトガニのような尻尾をもつ、という意味で、limuloides はカブトガニに似た、という意味だと思われる。