エオブロンテウス・ラティカウダ

ご覧のとおり尾板のみの部分化石だが、これは仕方がない。というのも、本種は部分化石でしか産出しないのだから。全身揃ったのが絶無だとはいわないが、ふつうにはまず見かけない。


Eobronteus laticauda


本種を最初に見たのはレヴィ=セッティの本で、そのときはそれほど心を動かされなかった。それからだいぶたって、今度はブロンニヤールの論文にアサフス・ラティカウダとして出ているのが目についた。ブロンニヤールが本種をアサフスに分類したのは、その尾部の重複板(外殻の折り返し)が大きいことに由来する。重複板のことはさておくとしても、たしかにこういう尾板をもつアサフスがいてもおかしくない気がする。

そうはいっても、今日の目からみるとやはりこれは紛れもないスクテルム類の尾板だ。おそらく尾板のみの部分化石で一般的な美的観照にたえるものといえば、このスクテルムと、一部のリカス類くらいしか思い浮ばない。リカスの尾部が畸形的な植物を思わせるとすれば、スクテルムのそれはまるでホタテガイのように優美だ。

ブロンテウスはスクテルムの旧式の呼び名で、エオは「古い」を意味する。スクテルムは一般的にデボン系から産するようだが、このエオブロンテウスはオルドビス紀後期の地層から出る。旧タイプのスクテルムだと思えばいい。


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今回の標本は母岩が薄い茶色で、化石本体はそれよりやや白っぽい色で保存されている。その質感は蠟のようで、ひび割れのように見えるテラスラインが美しい。幅は55㎜で、完全体だと10㎝ほどになるだろう。裏側に見えているのは本種の頭蓋の一部だろうか?