読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ダルマニテス・ミオプス

またしても部分化石だが、今回のは英国ダドリーのもの。前回のパラボリナとあわせて、英国産が少しづつ増えてくるのは嬉しい。


Dalmanites myops


しかし、これはほんとにダドリー産なのだろうか? 

そういうことになると、まったく自信がない。なにしろダドリーの三葉虫を見るのはこれが初めてなのだから……情けない話だが、そのへんはまるでダメだ。購入元が「ダドリー産です」というからそう信じているだけのこと。

母岩はやや青みがかった石灰岩で、私の知るかぎり、ゴトランドのものにいちばん近い。そういえば前に海底プレートの標本を買ったときも、ゴトランドのものとダドリーのものとは非常によく似ていた。どちらもシルル紀の浅瀬であること、そこに棲んでいる生物が共通していること、などが相似の由来だろうか?

ダドリーやゴトランドが化石の名産地といわれるのは、滑らかな石灰岩中に生物の外殻(硬組織)が溶けずにきれいに保存されているからではないかと思う。今回のダルマニテスも、頭部だけとはいえ、その保存状態はロチェスター頁岩のものよりもむしろいい。そして同じくダルマニテスといいながら、米国産(リムルルス)と英国産(ミオプス)とではやはり微妙な違いがある。

言葉で説明するのはめんどくさいから、画像だけ出しておこう。






     * * *


ミオプス(myops)というのは「ハエの眼」という意味で、ファコプス類に共通の集合複眼をさす。近視を意味する myopy とは関係ない。ただし、べつに myopsis という言葉があって、これは myops と語源を同じくする。ミオプシスは「ハエの眼」というより「目の中のハエ」といったほうが分りやすい。目の中のハエ、すなわち飛蚊症だ。


     * * *


ダドリー産のダルマニテスには、べつにダルマニテス・カウダトゥス(D. caudatus)というのがある。ミオプスとの違いは、頭部の先端に小さい吻がついていることだ。頭部の縁を見て円かったらミオプス、尖っていたらカウダトゥスと見当をつけてまず間違いない。

それにしても、このダルマニテスの頭部をじっと眺めていると、一種のゲシュタルト崩壊が起ってくる。いったいこれが何の頭なのか分らなくなるのだ。もちろんダルマニテス(科)のものだということは認識しているが、メタカンティナ(アカステ科)の頭にも、メタクリフェウス(カルモニア科)の頭にも似ているような気がする。さらにはカリオプス(プテリゴメトプス科)の頭にさえも!

最後に、本種を最初に記載したケーニヒ(Koenig)の論文から図版をあげておく。ちょっと稚拙で、哺乳類の頭のようでもある。ダルマニテス類の撓曲姿勢は、この図のように、頭部の端と尾部の端が完全に合わさらないことが多いようだ。体のまんなかではなく、前寄りのところで折れ曲っている標本をよく見かける。


Asaphus myops