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パラディン・トランシリス

私にとっては初の石炭紀三葉虫であり、今のところ唯一手持ちのプロエトゥス目がこれ。本種は名前にちょっとばかり混乱があって、あるところではグリフィチデス(Griffithides)と呼ばれ、またあるところではシュードフィリップシア(Pseudophillipsia)もしくはカルニフィリップシア(Carniphillipsia)と呼ばれている。私としても、「パラディン」が正しいのかどうか自信はないが、とりあえず購入元の表記に従っておく。


Paladin transilis




産地はロシアのヴォルゴグラード州のジルノフスク、年代は石炭紀前期とのことだが、この情報もあまり当てにならない。名前と同様、産地や年代にも諸説があるので、とりあえずヴォルゴグラード州のどこか、と思っておくのが無難だろう。本種のように特徴のある種類がそういろんな場所で採れるとも思えないのでね。

石炭紀ペルム紀三葉虫は完全体で出ることは稀で、多くは尾板だけ、運がよければ頭部も、というのが一般的な産状らしい。今回の標本も、まさしくその尾部と頭部*1なのだが、象牙のような色合いとアラバスター(雪花石膏)のような質感のおかげで、化石にあるまじき(?)高級感を漂わせている。部分化石ですらこの通りなのだから、完全体のすばらしさたるやいかばかり──

三葉虫には人それぞれ好みのタイプがあると思うが、本種は三葉虫愛好家のすべてにアピールするものをもっていると思う。これを見てなにも感じない人は、三葉虫とは無縁の人だ。私はといえば、この標本ひとつだけでプロエトゥス類、さらには石炭紀への道がついてしまった。

「このころ(デボン紀末)には、時代はプロエトゥス科の変種たちのためにすっかり筋書きがととのえられていた。私の友人のボブ・オーウェンズは、その多様多岐にわたる微妙なちがいを激賞する。ゲルハルト・ハーンとレナーテ・ハーンは、これらの三葉虫のあらゆるニュアンスをことごとく熟知しているドイツ人教授である。そして、熱帯の海がヨーロッパの大半を浸水させていた石炭紀の初期に、プロエトゥス科が数多くの異なるデザインをつくりだしたのは事実である。……」(リチャード・フォーティ「三葉虫の謎」より)

地味なことでは定評のある(?)プロエトゥス類がせいいっぱいの多様性を繰り広げたのが石炭紀だったとすれば、全盛期とは比べ物にならないとはいえ、そこにはやはり注目すべきものがあるように思う。この手のものとしては、アメリカにいくつか産地があり、ヨーロッパではなんといってもベルギー、それからドイツにアプラートという重要な産地がある。

尾板だけ、というのはさすがにつらいが、頭部だけならまずOKだ。もちろん全身揃っているに越したことはないので、ぼちぼち探索の手を進めていければいいなと思う。

*1:厳密には胸節の一部を含む