パラディン・ムクロナトゥス

ちょっと前にコメント欄での返事に「どうしようか迷っている黒いパラディンがある」と書いたが、やっぱり気になったので売り手に問い合せてみたところ、「あれよりいいのがある。欲しいなら譲るよ」と別の標本二個の写真を送ってくれた。

まあたしかにそれらは保存もいいし、見栄えもする。いかにも、もっていて自慢になるような品だ。しかしどういうわけか、私には最初に見た標本がいちばんしっくりくる。これはもう好き嫌いの問題だから、価格の高低、価値の有無は関係ない。

というわけで手に入れたのが下の画像のもの。


Paladin mucronatus




名前は例によってあやふやだが、イギリス北部のダラム州アイアショープバーンで産するパラディンといえばおそらくこれ以外にないので、同定にあまり気を使う必要はない。大きさは尾棘の先端まで26㎜。


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本標本の目につく特徴として、その浮彫のような佇まいがあげられる。本体の片側を削り込んでいって、もう一方は母岩に残したままにするというのが一般的かどうかは知らないが、今回のものに関しては、そのやり方が功を奏しているように思う。「裏の方は剖出しないんですか」と訊いてみたら、「自分の技術ではこれ以上はむり」とのことだった。まあやればできないこともないと思うが、クリーニングのしすぎは標本をつまらなくすることが多いので、とりあえずはこのままにしておこう。

黒い母岩の上で黒光りしているパラディン。それはロシア産の白いパラディンの対極に位置するものだが、ふしぎと上品さを失っていない。中軸はやや荒れ気味だが、頬棘は完全ではないまでも優美に延びているし、名前の由来になった尾棘もちゃんとついている。前縁のテラスライン、それになんといってもこの小ささで個眼が確認できるのがすごい。網の目のようになった、いわゆる完全複眼で、スクテルム類のそれによく似ている。




石炭紀のプロエトゥス類は、シルル紀デボン紀のゲラストスに代表されるような、ずんぐりしたタイプではなくて、フィリップシアの系統に属するスマートな体形のものが多いような気がする。


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このブログに年頭所感として「今年の目標としてはプロエトゥス類をなにかひとつ手に入れたい」と書いたが、ぎりぎりになってそれが実現したのもふしぎな縁だ。そして、数もひとつどころかすでに四つも手に入れた。ロシアのパラディン、ベルギーのピルトニア、英国のパラディン、それとあとひとつあるが、これは次回にまわそう。