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オギギヌス・ゲッタルディ

フランスの代表的な三葉虫は? と訊かれたらどう答えるか。あれでもない、これでもないと考えたあげく、最後に残ったのがオギギヌス・ゲッタルディ(Ogyginus guettardi)だ。初期の分類者であるブロンニヤールがこれをアサフス目に含めず、あえてオギギア目を立ててそこに分類したことからも、なんとなく特別扱いされている種のような気がする。

とりあえず画像をあげよう。一枚目はブロンニヤールの論文の図版、二枚目は TRILOBITES OF THE WORLD に載っているもの。




さて、これを見てどう思われるだろうか。「これってノビリアサフスじゃないの?」と思われる方がおられるかもしれない。じっさい私も最初はそう思った。属名が違うだけで、実質的にはフランス産のノビリアサフスなんじゃないか、とね。

ノビリアサフスについてはかつて何度か言及したことがある。この種の特徴として第一にあげるべきは、尾板の中軸に並ぶV字型の装飾と、同じく尾板の肋と交差しつつ走る放物線状のテラスラインだ。おおざっぱにいって、こういう尾板をもっている種類なら、ノビリアサフスと同定してまちがいない。ポルトガル産の三葉虫でノビリアサフスと紛らわしいのにイサベリニアというのがあるが、これには尾板中央のV字模様はないようだ。

ではフランスのオギギヌスはどうかというと、こういったノビリアサフスに特徴的な尾板の装飾がすべて備わっているので、そのかぎりでは Ogyginus guettardi = Nobiliasaphus nobilis と見なして差し支えない。ところが頭部を見ると、やはり両者を同一種とするにはちょっと無理があることに気づく。

この間の事情を語るものとして、次の掲示板にあがっている図をご覧いただきたい。


この図では、Ogyginus ではなくて Basilicus になっているが、あまり気にしなくていい。これがノビリアサフスとは別種であることさえ分ればそれでいいのだ。

今回、そのオギギヌス(もしくはバシリクス)と思われる標本を手に入れた。あまり状態はよくないが、特徴はよく出ているのでこれでよしとしよう。ベージュ色に保存された個体の方には、特徴的な尾板の様子(V字模様とテラスライン)がはっきり表れている。標本全体の大きさは約75㎜。産地はブルターニュ地方のラ・ドミヌレ(La Dominelais)。


Ogyginus guettardi (Basilicus guettardi)





フランス産に特有の、野暮ったくもあればシックでもあるマチエール。それはセザンヌの描く静物画のようだ。あまり一般受けはしないかもしれないが、いったん気に入ったら病みつきになりそうな、ふしぎな魅力があると思う。



(2月5日、追記)
ふと気づいたが、この標本の上の方のオレンジのほうがオギギヌスもしくはバシリクスで、下のベージュのほうはノビリアサフスなんじゃないか、と。いったんそんな気がすると、もうそういうふうにしか見えなくなる。間違っているかもしれないが、確証があがるまでは宙ぶらりんにしておこう。