ハルピデスの一種、つけたりエウロマの一種

前々から欲しかったハルピデスをついに購入! しかし……

届いたものを見ると、体の下半分があからさまに作り物だ。別個体のものをくっつけたというよりも、補修者がフリーハンドで胸節を「彫刻」しているようにみえる。これはいかんなあ……と思いつつ、まあモロッコ産だから仕方ないか、とも思う。


Harpides sp.



だいたいモロッコ産のハルピデスの標本は体の下の方が怪しいのが多い。おそらくほとんどの個体が尻切れとんぼで、それをごまかすためにいろんな手法で「補正」が行われている、というのが実情ではないだろうか。

もしこれが肯綮に当っているとすれば、「補正」が真に迫っていようと、稚拙であろうと、インチキであることに違いはないので、そういう点にあまり神経質になっても仕方がない。それは置いといて、もっとほかにいいところを探してみよう。

この標本のいいところは、そのサイズと色、頭部のプロソポン、それから全体的な存在感だ。

サイズは横幅が55㎜。長さのほうは、体節が途切れているのと、体を曲げているのとで正確なところは分らないが、延びた姿勢で8㎝から9㎝くらいはありそうだ。いずれにせよかなり大ぶりな個体だといえるだろう。

色は、鍔の部分が濃いオレンジ色で、胸節もほんのりオレンジ色に染まっている。これが非常に美しい。ハルピデスではこういう色のつき方は珍しくないが、この標本の色合いはある種の鉱物を思わせるような鮮やかさをもっている。

プロソポン(prosopon)というのは、三葉虫の外殻上にあらわれた奇妙な特徴を指す用語だが、ハルピデスにおいて顕著なのはアイリッジ(eye ridges)とジーナル・シーカ(genal caeca)だ。前者は頭鞍と眼とをつないでいる畝のことで、後者はアイリッジから発して頬上を放射状に覆っている葉脈のような組織をさす。こういったプロソポンの容子から、本種は狭義のプティコパリアと類縁関係にあるのではないか、という気がする。



最後に、うちにある比較的大きい標本と並べた画像をあげておこう。アサフスやディプレウラに伍しても引けをとらない存在感が伝わればいいのだが、どうか。



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今回の標本にはおまけ(?)としてエウロマの一種がついている。エウロマといえば、かつてハミー工房出来の標本を手に入れたことがある。下の画像に示すのがそれだが、だいぶ前に手放してしまった。今回またそれがうちに来たわけで、あらためて眺めると、これもやはりプティコパリア風味をもっていて、意外に私の好みに合う。ちなみにアドレインの新分類では、本種はプティコパリア目からオレヌス目に移されている。


Euloma sp.(ハミー工房の品)

Euloma sp.(今回の標本)


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モロッコのオルドビス系には、代表的なのがふたつあって、ひとつが Draa 川沿いの Fezouata 層、もうひとつがアトラス山脈各地に露頭をもつ Ktaoua 層。どちらもおそろしく広範囲にわたっていて、スケールの大きさが日本などとはぜんぜん違うようだ。

ハルピデスやエウロマが産出するのはフェズアタ層で、ここからは私の興味の的であるモロッコ三大疑惑の三葉虫のうち、アサフェルス・スタッブシ(通称シンフィスリナ)と、ディケロケファリナの二種が産する。それ以外にも、軟体部が保存された化石が出たとか、バージェス動物類似のものが出るとか、いろいろと発見の多い産地のようだ。