ファコプスの館 -La Maison de Phacops

化石ヲ蒐集シナイ日記

アンゲリナ・セジウィッキ

北部ウェールズの Porthmadog で産出したもの。前後の長さが 34mm なのに対し、左右の幅は 54mm もある。こんなに横幅の広い三葉虫はふつうには考えられない。これはもちろん地中で圧力が加わった結果こうなったので、ウェールズではごくふつうに見られる産状とのこと。この地ではむしろ変形していない三葉虫のほうが珍しいらしい。

変形しているだけでなく、全体的に奇妙な色合いで、とくに本体は黄鉄鉱化しているんじゃないかと思うような、鈍い金属光沢を放っている。


Angelina sedgwickii



まあ、保護剤のせいでそう見えるだけのような気もするし、そうであってほしい。というのも、三葉虫における黄鉄鉱化問題は一筋縄では行かないので、うちにあるセレノペルティスも三年前に買ったときとくらべると、まさにメッキが剥げたような状態になっている。


三年前

現在


こういうのを見ると、真鍮ブラシでこすって金色に染めたのを売ってるんじゃないか、と邪推したくもなる。


まあそれはさておき、このアンゲリナ・セジウィッキがオギギオカレラやオギギヌスと並んでウェールズを代表する種類であることは、SSPの図鑑を見てもわかる。そこには3ページにわたって5個の標本が紹介されていて、私の買ったもののように横方向に引き延ばされたものもあれば、縦方向に引き延ばされたのもあり、またほとんど変形を蒙っていないものもある。

これらの画像を見ていると、どうも縦方向に細長く引き延ばされた標本のほうがよりアンゲリナらしいような気がする。これはおそらく Angelina という優美な名前に引かされて、そういうほっそりした標本のほうへ感情移入しやすくなっているからではないかと思われる。

しかしじつのところ、アンゲリナというのはスウェーデンの偉大な古生物学者のニルス・ペテル・アンゲリンにちなんだ名前だと思われるので、思ったほど優美でも優雅でもないのかもしれない。

まあいずれにしても、このアンゲリンとセジウィックという、二人の偉大な学者の名前を背負ったオレヌスが手に入ったのは幸いだった。これだけは、名前に負けないだけのりっぱな標本を、と思っていたが、結果的に今回のような、やや不格好な標本になってしまった。それでも、まずまず味のある、眺めていて飽きない標本だと思う。

オレヌス類はあとまだ少し欲しいものがあるので、今後も注目していきたい。