エンクリヌロイデス・エンシエンシス

中国の四川省で産出したシルル紀三葉虫。買ったときの名前は Coronocephalus rex Grabau だったが、これはどうだろうか?

中国の三葉虫についてはあまりよく知らないので、断定的なことはいえないが、ごくふつうのイチゴ頭に「Coronocephalus 王冠をかぶった頭」という名前をつけるのも変なら、2cmほどの大きさしかないものに「rex 王様」という種名をつけるのも変だ。

というわけで、仮にしばらくエンクリヌロイデス・エンシエンシスとしておこう。

さて、上に「ふつうのイチゴ頭」と書いたが、イチゴ頭自体がすでにふつうでないので、今回のものもなりは小さい(18㎜)けれども、ルーペで拡大して眺めるその姿はそれなりに味わい深い。


Encrinuroides enshiensis


頭部の粒々はややおとなしめだが、胸節は彫りが深く、かつ粒々に覆われていて、同じくエンクリヌルス科に属するボヘミアの稀少種プラシアスピスを彷彿させる。


Plasiaspis bohemica


     * * *


エンクリヌルス科に属する三葉虫は、いずれも眼軸が伸びる傾向にあって、本種も本来なら斜め上方にカニの眼のようなのが飛び出しているはずだが、この標本では失われている。頬棘もあったのかもしれないが、やはり失われている。

失われたものを惜しむ気持がないわけではないけれども、こうして眼もない、トゲもないのっぺらぼうに近づけば近づくほど、イチゴ頭本来の異様さが強調されてくるのはなんとも皮肉な話ではある。