レプリカを集める男の話

ある男がいて、三葉虫のレプリカを集めるのを楽しみにしていた。あんまり次々に買ってくるものだから、奥さんからいつも小言をいわれていた。

──よくそんなつまんないものばっかり集めてられるわね。
──うん、ごめんよ。でもおれは三葉虫が好きでね。まあ、安月給じゃほんものは買えないんで、レプリカでがまんしてるのさ。安いんだから、そうガミガミいうなって。

やがて男は年老い、死んだ。あとには膨大な量の三葉虫のレプリカが残された。妻はまとめてゴミに出そうと思ったが、やはり夫が大切にしていたものなので、知人を通じて骨董屋に買い取ってもらうことにした。どうせたいしたお金にはならないだろうけど……

骨董屋はざっと検分すると、ちょっと気になることがあるからといっていくつかレプリカを持ち帰った。数日後、連れの男といっしょに改めて商品を見直してから、骨董屋はこういった。

──奥さん、驚いちゃいけませんよ。ここにあるこれ、ぜんぶほんものですよ。
──え?
──こちらの化石専門の方がそうおっしゃるんだから、まちがいありませんよ。ぜんぶ合わせると、かなりの金額になるとのことですぜ。

じっさい、話をきくと驚くほどの高額標本ばかりなのだった。

──どうなさるかは奥さんの勝手だが、マニアがいくら金を出しても欲しがるような化石ばかりなんだから、もしいらないんなら、私が買い取りますよ。責任をもってね。

妻はあまりのことに声も出なかったが、やがてあることに思い当って慄然とした。

──あの人は、こんなものを買うお金をいったいどこから手に入れていたんだろうか?