ブマストゥスについて

フォーティの本の図版で見て以来、ブマストゥスには特別な関心をもっていて、いつかは現物を、と思っていたが、なかなか目にする機会がない。それもそのはずで、これは英国のシルル紀の産なのである。そんなものが私のところへ廻ってくるはずもないのだが……

それだけに、この前買ったレプリカのなかに、次のようなのを見つけたときは、思わず快哉を叫んだ。



これこそあのフォーティの本で見かけたブマストゥスではないか。そう思って調べてみると、どうもブマストゥスではなくてキバンティクス(Cybantyx anaglyptos)という種類のようだ。キバンティクスは1978年に記載されているから、わりと新しく見つかった種類のようだが、じつは以前から Illaenus (Bumastus) insignis という名前で知られていたものと同じだという説もある。

もしそれがほんとなら、ソルターにまでさかのぼる古典的な三葉虫なので、フォーティがこれをブマストゥスの名で呼んでいてもおかしくない。たとえばエルドレジオプスをファコプス・ラナと呼ぶように。

じっさい、見れば見るほど両者は瓜二つだし、そのボディラインは数あるイレヌス類のなかでも際立って優美だ。


左がフォーティの本のブマストゥス、右がキバンティクスのレプリカ


レプリカながら、じつにたまらん三葉虫であり、その丸みを帯びたふくよかなラインは、いっそけしからんといってもいいくらいだ。





キバンティクスやブマストゥスは厳密にはイレヌス科ではなく、姉妹科のスティギナ科に属するらしい。このあたりの分類は微妙だが、本種を見ていると、どこかパラレユルスを思わせるところもある。パラレユルスまでくると、スクテルムまではあと一歩だ。こうして、スティギナからスクテルムまで、ゆるやかに形態的な連鎖をたどることができる。