ファコプスの館 -La Maison de Phacops

化石ヲ蒐集シナイ日記

削除予定の雑文その二

私の蒐集欲が衰えたのは、たぶん欲しい種類をだいたい手に入れてしまったからではないか、と思っている。たったこれだけで満足なの? と驚かれるかもしれないが、まったくのところ、喉から手が出るほど欲しい、というのがなくなったのは事実だ。

蒐集の初期に興味をもった三葉虫たち。当時の乏しい見聞のかぎりで「欲しいものリスト」を作ってみたが、それをいま見ると、四年間のがんばりのおかげで、当初欲しいと思ったのはたいていその後手に入れている。

ふつうに考えれば、蒐集がすすむにつれて視野が拡大し、欲しいものは後から後からふえていくように思うが、私の場合はまったく逆で、蒐集の情熱は初期にマックスに達していて、じっさいの蒐集がすすむにつれだんだんと情熱そのものが目減りしていき、同時に欲しいと思う種類が減っていく、という道をたどってきたようだ。

というわけで、いま何が欲しい? と訊かれても返事に窮するが、当時の「欲しいものリスト」に入っていて、まだ手に入れていない種類のひとつに、モロッコのオンニア・スペルバがある。これはいまだにちょっと未練がある。

オンニア類似の三葉虫はモロッコ以外にもあちこちから出ている。しかし、私にはどうしてもモロッコ産でないとダメなのだ。なぜかというと、最初に見てつよい衝撃を受けたのがモロッコ産だったことと、保存状態やサイズのうえで、モロッコ産を超えるものが世界のどこからも産出していない、という事実がある。学術的位置づけとか、歴史的重要性とか、そんなものは私にはあまり関係がない。いっさいの文脈を取り払ったあとに残る、純粋に審美的存在として、モロッコのオンニアはいまも私を誘惑してやまないのである。

ところが、現実は甘くなくて、私の欲しいと思うオンニアはもう市場にほとんど出てこなくなっている。何度か、これはと思う個体を見かけたことはある。しかし、「まあいま買わなくても……」とか「もうちょっと安いのを……」と思って見送っているうちに、標本自体が姿を消してしまった!

そのうち、「超稀少! 入手困難! 極上!」とかいうキャプションをつけて売りに出されるときがくるかもしれない。そのときまで、私の関心は持続しているだろうか? また相応の金額を出す覚悟はできているだろうか?

まあそういっても、ほんとに欲しいなら業者にメールで問い合わせるとか、そういう行動に出るはずで、それをしないということは、やはりそれなりの欲望でしかないのかもしれませんね。