人の楽しみに蒐集がある。
考えてごらん、放出もある。
コレクターのなかでも、放出が好き、という人は少ないのではないか。私は根がコレクター気質ではないせいか、わりと放出は好きなほうで、買ったものの3分の1くらいは売りに出している。今回も部分化石を中心に10個あまりを出して、置き場は寂しくなったが、気分はすっきり軽くなった。
放出というのはやり始めると勢いがついてしまうことがあり、当初は予定していなかったものまで処分の候補にあがってくる。今回はかろうじて予定分だけで終ったが、棚を見渡すと、あっちにもこっちにも放出されたがっているようにみえる標本がある。これらをどうするか。そういうことを考えるのも放出の楽しみのひとつだ。
買ってくれた人々には、レプリカをおまけでつけようと思っていたが、小さい化石ばかりなので、レプリカを入れると重さが増して送料があがる。それはたぶん買い手も望まないだろう。というわけで、レプリカはそのまま残ってしまった。
自分も蒐集の初期には、業者や転売屋ではない、一般のコレクターの放出品を安く譲ってもらった。そのうちのいくつかはいまでも手元に置いて大切にしている。自分の出すものも、そういうふうに買い手に愛されればいいと思う。そしてそのためには、売り手として、せめて買い手に不快感を与えないような対応をしたいと思う。
標本は気に入ったが、売り手の態度が最悪で、それが標本に暗い影を落とす、というような場合もないわけではないのだから。