化石や鉱物の手入れ

みなさんは標本につく埃はどうしてますか?

自分はケースに入れて保管しているから、埃なんか気にしない、という方もおられるでしょう。まあそれはそれでかまいませんが、ケースに入れているからといって、埃が付着しないとはかぎらない。まったく、埃というやつはどこからでも侵入する。それに、埃でなくても、脱脂綿やなんかの綿ゴミが標本に纏わり付いてる場合もある。ふだんは分らなくても、画像を撮ったりすると意外にゴミだらけ、ということもあるだろう。

さて、この標本に付着する埃だが、見た目がよろしくないのは当然として、いったい実害はあるのだろうか?

私はあると思う。たとえば、鉱物や化石を扱っている店の棚の下の方にしまいこまれた三葉虫たち。それらを見ると、母岩ともどもなんとなくくたびれて、煤けたようになっている。たんに表面が薄汚れているのではなく、標本の内部にまで汚れが沁み込んでいそうで、布で拭ったくらいでは簡単にきれいになりそうにない。これは長年にわたって標本に積もり積もった埃の作用でこんなふうになってしまったのではないか。

まあ化石の場合、ある程度の古色はかえって標本の品位を高めるかもしれない。問題は鉱物だ。これは硬度が低くなればなるほど外部からの作用の影響を受けやすくなる。それは見やすい道理だろう。埃くらいならまだどうにかなるが、タバコの煙なんかはてきめんに悪影響を及ぼす。煙の粒子が鉱物の表面に付着し、徐々に変質させていくのは自分の手元にある標本をみればわかる。それはもう水洗いしようが洗剤で洗おうが、ぜったいに元の状態には戻らない。

というわけで、せっかく手に入れた標本をなるべく長く元の状態のまま保管したいと思う人々にとっては、埃対策にもそれなりに気をつけなければならないのである。

私は最初、カメラのレンズの埃を飛ばすゴム製のブロワーがいいんじゃないかと購入してみたが、これはほとんど使い物にならなかった。埃というものは意外に粘着性があって、そう簡単には空気では飛ばせない。それに、繊細な標本の近くにこれを持っていってシュポシュポするのは、先端を標本に当ててしまいそうでこわい。まあないよりはマシ、といったレベルで、これはあまりお勧めではない。

私が標本の埃落としに使っているのは、パソコンのモニター用の刷毛だ。これは静電気の作用で埃を除去してくれるらしいが、正直いって静電気が効いているのかどうか定かではない。ただ、毛が非常に細く柔らかいので、たいていの標本に使っても大丈夫だ。究極のトゲトゲ標本といえるコネプルシアの逆立ったトゲをかき分けるようにして外殻の埃を除去しても、トゲにはまったくダメージを与えずにすむだろう。それに、刷毛の長さを調整することでコシの強さに変化をつけられるのもいい。しつこい埃には刷毛の長さを短くすることで対処できる。

鉱物の場合、化石とは比較にならないくらい表面の構造が繊細なものも少なくないが、いちおううちにある鉱物はどれもこのブラシできれいに掃除できる。脆いので有名なジプサムでもまったく問題ない。オーケン石くらいになるとちょっと心配だが、いつか手に入れたら試してみよう。


【2006年モデル】ELECOM コンパクトブラシ KBR-006BU

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